ライター・ブロガー必見!表現の幅を広げる言葉の力と、語彙力を高める本3選

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振り返ってみると、これまでに何度も「文章力が欲しい!」と感じたことがあった。読書感想文を書いていたとき。課題のレポートをこなしていたとき。卒業論文に取り組んでいたとき。企画書を仕上げていたとき――などなど。

学生時代はもちろんのこと、社会に出てからもずっと、僕らは「文章」と向き合わなければならない。そのたびに「文章がお粗末すぎる」と嘆き、「もっとうまく書けるんじゃないか」と悩み、「文章力が欲しい!」と感じていました。

でも「文章力」って、具体的には何を指すものなんだろう? 改めて考えてみると、一口に文章力と言っても、それは実に複数の要素によって成り立っていることがわかります。

・一から文章を生み出す、作文力。

・読者にわかりやすく伝えるための、伝達力。

・語彙を駆使して文章に魅力を持たせる、表現力。

・全体を筋道立てて整理しまとめる、構成力。

「表現力」は「語彙力」と同義であるようにも感じるし、「伝達力」は「説得力」と言い換えてもいいかもしれない。いずれにせよ、文章力を考えるにあたってはこのように要素を細分化し、自分が高めたい能力を定める必要があるのではないでしょうか。

そこで今回は、文章力のなかでもしばしば重要なものとして挙げられがちな――というか、場合によっては文章力とイコールに語られている印象もある――「語彙力」について、いくつかの本を参照しつつ考えてみようと思います。

理解語彙と使用語彙って?語彙の基本を学ぶ『語彙力を鍛える 量と質を高めるトレーニング』

語彙力を鍛える 量と質を高めるトレーニング (光文社新書)

語彙力を鍛える 量と質を高めるトレーニング (光文社新書)

 

そもそも、「語彙」とはなんだろう。

初めてこの言葉を聞いたのはいつ頃だったかしら――と振り返ってみると、中学・高校くらいだったような気がする。なんとなく英語の「ボキャブラリー」の印象が強く、「知っている単語の数=語彙力」という認識だったような覚えがあります。

本記事で最初に紹介するのは、そんな「語彙」を基礎から紐解きつつ、「語彙力」の鍛え方を具体的に学ぶことができる1冊。それがこの『語彙力を鍛える 量と質を高めるトレーニング』(光文社)です。

見聞きして理解できる語彙のリソース、理解語彙の「量」を増やす

本書によると、「語彙」とは、一口に言えば「語の集まり」のこと。個々の単語を指すものではなく、複数の語の集合が、語彙。先ほどの「知っている単語の数」という認識も、当たらずとも遠からず――といったところでしょうか。

ただし、「その人が知っている単語の数=その人の語彙力」であるとは言い切れません。

なぜなら、その人が「聞いて理解できる言葉」が、「自分で使うことのできる言葉」であるとは限らないから。その言葉の存在を知識としては知っていても、ふんわりとしか意味を把握しておらず、自分では使えない場合があります。それこそ、「読めるけれど書けない漢字」のように。

この「知っている」語、見聞きして自分が理解できる、頭の中にある語彙のリソースを「理解語彙」と呼び、話したり書いたりするとき、「実際に使える」語彙を「使用語彙」と呼びます。前述の例のほか、普段は使う機会がない古語も理解語彙の一種と言えますね。

両者を比べると、使用語彙よりも理解語彙のほうが必然的に数は多くなります。なので、まず考えるべきは、理解語彙の増やし方。

本書前半では、「類義語」「対義語」「上位語・下位語」「語種」「文字種」「書き言葉」「専門語」「方言」「新語・古語」「実物」「語構成」を考えることによって、理解語彙の「量」の増やし方を紐解いています。これが、語彙力を高める第一段階です。

語と語のつながりを理解し、使用語彙の「質」を高める

とはいえ、理解語彙を増やすだけでは不十分。どれだけたくさんの言葉を知っていようと、正しく使うことができなければ意味がありません。

たとえば、「なおざり」と「おざなり」の違いは? 「まず最初」「事前予約」「各自治体ごと」といった表現に感じる違和感とは? 「お金を出す」か「お金を払う」か「お金を使う」か、それぞれの表現はどういった文脈で使えば適切?

こういったことに対応するためにも、個々の単語についての理解を深め、使用語彙を増やすことが大切になってくるわけです。これが、語彙力を高める第二段階。

本書後半では、「誤用を回避する」「重複と不足」「連語の相性」「語感のズレ」「語の置き換え」「多義語のあいまいさ」「立場の想定」などの視点から、言葉の適切な使い方を学び、使用語彙の「質」を高めることを目指しています。

このような前提と本書の内容を踏まえると、語彙は「語の集まり」であると同時に、個々の単語の違いや連関も含めた、「語と語のつながり」を指すものでもあることがわかります。ひとつひとつの単語だけでなく、その関連性を学ぶことも重要になってくるわけですね。

つまり、知識として語彙の「量」を増やすだけでは、語彙力が身につくとは言い切れない。複数のネットワークを介した無数の語のつながりと関係――語彙の「質」の部分も考慮し、場面によって正しい表現を選択できてこその「語彙力」である。そのように言えます。

「量」と「質」の両面から語彙力を鍛えるには?

語彙力=語彙の量(豊富な語彙知識)×語彙の質(精度の高い語彙運用)

『語彙力を鍛える』の文中では、「語彙力」を上記の等式で表現しています。語彙力を鍛えるには、語彙を「量」と「質」の両面から学ぶ必要があるわけですね。ざっくりとした要約ではありますが、これが語彙を考えるにあたっての大前提となります。

正直に言って、基本を学ぶだけなら、これ1冊でも十分かもしれません。途中途中で例題も挟んでおり、それを解きながら読み進めるだけで、ある程度は語彙力を鍛えられるように感じました。読み終えたころには、きっと「言葉」との向き合い方も変わっているはず。

その一方で、語彙の学習方法に型はなく、さまざまな切り口から語彙力を鍛えることが可能だという見方もあります。テレビ番組を見ているだけでも見知らぬ単語と出会うことはありますし、小説やマンガだってそう。友人との雑談ですら、参考になることがあるでしょう。

ただ、やっぱり最初は指針があったほうがやりやすい、という人も少なくないはず。

そこでここからは、多種多彩な言葉と文章に触れながら語彙の「量」を増やすことができる、2冊の本を紹介。すでに複数の分野にわたる知識がある人、普段から本を読んでいる人には物足りないかもしれませんが、参考になりましたら幸いです。

意味がよくわからないまま使っている単語を総復習!『読解 評論文キーワード』

読解 評論文キーワード:頻出225語&テーマ理解&読解演習50題

読解 評論文キーワード:頻出225語&テーマ理解&読解演習50題

 

「高校時代、評論文が苦手だった」という人は、少なからずいるのではないでしょうか。それまで読んできた小説や平易な説明文とは異なり、高校で読む評論文は、難解な専門用語が平気で登場する長文ばかり。急にハードルが高くなった印象があります。

ジャンルもさまざまで、社会問題や科学はもちろん、政治や哲学といった縁遠い分野の文章も。僕自身、難しい用語に目を白黒させていたような思い出があります。パラダイム、エクリチュール、ポストモダン、オリエンタリズム、ニヒリズム……ぐぬぬ……おのれ横文字め……。

欄外に用語の解説はあるものの、それも2、3行程度の簡単なもの。結果、「意味や定義はうろ覚えだけれど、ニュアンスはなんとなくわかる言葉」ばかりが増えて、今日まで至る――そんな人もいるのではないでしょうか。

そういった言葉を改めて学ぶことができるのが、『読解 評論文キーワード』(筑摩書房)。紛れもない「高校生向けの参考書」ではありますが、大人が読んでも勉強になります。語彙力を鍛えるにあたってのメリットとしては、理解語彙を使用語彙へ変換する手助けになるかと。

多彩なジャンルの評論文を読み、語彙量を増やす

タイトルのとおり、入試の評論文対策を目的とした内容ではあるのですが、ほかの参考書ではあまり見られない大きな特徴があります。それは、「キーワードの意味だけでなく、『キーワードが用いられる文脈やテーマ』にまで踏み込んで解説をしている」(P.4より)こと。

ただ単にキーワードの意味を概説するだけではなく、その単語が内包するテーマにも触れつつ、「どういった文脈で使われているのか」まで説明しているのです。

たとえば「規範」というキーワードだったら、「社会や集団の中で行動する際に従うべき基準」という意味を示したうえで、解説部分では「暗黙に了解されているルールまで含まれる」と補足しつつ、「悪」という概念が規範によって生み出されたものであるという例文を併記。

さらに、同じページで取り上げられているキーワード「倫理」の項目では、「規範」との細かなニュアンスの違いにも触れられています。評論文の問題を解くことによって学んだ知識をその場で確認できるのは、参考書ならではの嬉しい構成ですね。

加えて、あるひとつのキーワードについて解説するにとどまらず、その類義語や対義語、関係のある別のキーワードもあわせて掲載しており、セットで覚えられる点も魅力です。

いくつか例を挙げると、「概念」と「観念」と「理念」、「文化」と「文明」、「科学革命」と「パラダイム」、「アナロジー(類推)」と「アレゴリー(寓意)」などなど。

そしてなにより、本書の「語と語のつながり」を考慮した取り上げ方は、それらを語彙としてインプットするのに最適だと言えるのではないでしょうか。普段はあまり触れる機会がない分野の文章を読めるという点でも、語彙の幅を広げるきっかけとなりそうです。

古今東西70篇の文章を味わえる!『高校生のための文章読本』

高校生のための文章読本 (ちくま学芸文庫)

高校生のための文章読本 (ちくま学芸文庫)

 

おなじく高校生向けの本ですが、ぜひとも大人にもおすすめしたい1冊である高校生のための文章読本。古今東西から厳選した70本の文章を掲載し、それぞれの文章に対して解説を加えた内容。500ページ以上にも及ぶ、大ボリュームの「文章読本」となっています。

取り上げられているのは、モーパッサン、プルースト、モーツァルト、武満徹、高橋源一郎、坂口安吾、夏目漱石、村上春樹、谷川俊太郎、丸山真男といった面々の著作。

十人十色の随筆をまとめて掲載することで、読者の文章力や語彙力を育む1冊――なのですが、それ以上に、純粋に「文章を楽しむ」ことができる本だという印象を受けました。「楽しむ」よりも「味わう」と言ったほうがしっくりくるかも。

名著を楽しみつつ、七十人七十色の文章表現に触れる

70にも及ぶ文章は、筆者の時代も、年齢も、場合によっては職業も、書かれた場所も異なり、さらには、テーマも、文体も、表現も、言葉遣いも、何もかもが違っている。それゆえに、個々に異なる表現の妙を存分に味わい、楽しむことができるのです。

また、それぞれの文章に対して加えられた、解説文も魅力的。随筆が書かれた時代や筆者の背景を汲み取りつつ、噛んで含めるようにまとめられた解説は、本文に奥行きを与えてくれるもの。掲載されている随筆が「料理」なら、解説文は「調味料」のようにも感じられます。

各章の合間合間に挿入された、編者たちによる「手帖」も参考になります。作文の書き方に表現技法、アイデアの生み出し方に先人から学ぶ方法など、文章執筆において勉強になる指摘が盛りだくさん。語彙力にとどまらない、文章法を幅広く学べる内容となっています。

曰く、「表現とは、一度人間の心の中を通ってきた“世界”に“かたち”を与えることである」(P.43より)。これは「表現」についての指摘ですが、まるで理解語彙が使用語彙に移り変わる過程のようにも読めます。特に、普段から文章を書いている人にとっては、こういった指摘が手助けとなるはず。

  1. 自分にしか書けないことを
  2. だれが読んでもわかるように書く

ある工業高校の国語教師4人が編纂し、1986年に出版されたという本書は、30年が経った今もなお読まれている不朽のアンソロジー。多種多彩な文例を読むことで語彙の「量」を増やしつつ、手帖・解説から「質」についても学ぶことができる、おすすめの文章読本です。

まとめ:「好き」が広げる言葉の世界

「語彙力を高めるのに役立つ本」を紹介するのなら、普通は類語辞典や百科辞典を取り上げるべきなのかもしれません。言葉を知らないことには語彙の幅も広がりませんし、たくさんの単語に触れようとするのであれば、やはり辞書が最適だと言えるでしょう。

でも同時に、当たり前に辞書を「読める」人は、決して多くないようにも思います。わからない単語があったときに調べるとか、暇な時間にパラパラめくるくらいのことはするかもしれません。しかし、普段から膨大な単語を目にしつつ、多くをインプットしようとするのは困難です。

なればこそ、本記事では、「読み物」に絞って取り上げてみました。

「語彙とは何か」を教えてくれる『語彙力を鍛える』に始まり、なじみのある「高校の評論文」を下地とした『読解 評論文キーワード』によって語彙を増やす感覚を実感し、古今東西の名手の作品を掲載している『高校生のための文章読本』で文章を味わい、言葉と親しむ。

もちろん、本を介さずとも言葉と接する機会はありますし、日常生活のなかで語彙力を鍛えることもできます。なので、本記事はあくまでも「こういった本を読めば、語彙力を高めることができるのでは?」という、一個人の提案として受け取っていただければと思います。

極端な話、「他人の話を聞く」だけでも、自然と語彙は増えていくと思うんですよね。それに今や、身近なコンテンツだって、多種多彩な言葉であふれかえっています。

テレビのアナウンサーやスポーツ実況、ナレーションの言いまわしは耳に残るし、マンガやアニメならではの独特な表現もおもしろい。ネットスラングも成り立ちを調べると興味深く感じられるし、Twitterで見かけた大喜利で笑わされることもある。

そういったなかから、自分が興味のある分野で使われている言葉を普段から意識して見る・聞くようにするだけでも、語彙力を育むことができるのではないでしょうか。さらに付け加えると、逆に「自分がよく知らない分野に触れる」「まったく趣味の異なる友人を持つ」ことで、一気に語彙量を増やせるようにも思います。

まずはこのような「好き」や「楽しい」をきっかけにして、多くの言葉を知ること。語彙の「量」を増やしたら、次は「質」を高めるべく正しい表現を学ぶこと。そうして、生きた言葉を自分のものとすることによって、語彙力が培われるのです。

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【執筆者】
けいろー

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フリーライター。インターネット大好きゆとり世代。新卒入社したメーカーで営業職として働くも、身体を壊して退職。無職期間にブログを書いていたら仕事をもらえるようになり、ノリで独立して今に至る。創作同人誌を読むのがマイブーム。

執筆ジャンルは、書評、アニメ、旅行、グルメ等、なんでもござれ。記事校正やメディア運営の手伝いなども承っています。


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