産後働くつもりが交通事故で内定取り消し!フリーの翻訳家として子育てと仕事を両立しようと思ったワケ

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交通事故で内定取り消し…。そんな予想外の出来事で、フリーの翻訳家になったという「しおり翻訳」さん。

予期せぬ出来事でしたが、在宅で仕事を始めてみたら、育児と家事を両立させるうえではちょうど良い働き方だったと言います。

そのときどきで自分の働き方を考え、コントロールしてきたという「しおり翻訳」さんに、翻訳の仕事について、また育児や家事との両立についてお話をお聞きしました。

 

交通事故で内定取り消し…!思いがけずフリーランスに

 

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―フリーランスになる前のお仕事について教えてください。

日系商社で英文事務や貿易事務、書類の翻訳などの仕事をしたあと、外資系製薬会社に移り、英語を用いたシステムユーザーサポートを担当していました。

 

―英語を使ったお仕事ですね。英語を専門にしようと思ったのはどうしてですか?

昔、鉄道会社の関連企業でアルバイトをしていて、定期券や特急券を窓口で販売していたんです。そのときに、アジア圏の外国人観光客がみんな堂々と英語を使っている様子に感化されて…。

それで自分もちゃんと自信を持って英語を話さなければ、と強く思うようになって、英語の専門学校に通い始めました。

 

―なるほど。それで専門学校でしっかり勉強を。

はい。2年間通って、TOEICで935点を取れるぐらいになりました。

 

―その後、英語を使ったお仕事に就かれたんですね。フリーの翻訳家になったきっかけは何だったのでしょうか。

外資系製薬会社に勤めていたとき結婚して、長女を授かったので産休・育休を取りました。

でも、もっと子どもといる時間を増やしたくて退社し、専業主婦になったんです。

とはいえ、やはり育児だけの毎日には物足りなさを感じる自分もいて、何か仕事をしたい、社会とつながっていたい、という気持ちがだんだん強くなっていきました。

それで長女が生後9カ月ぐらいのころから就職活動を始め、財務系会社の翻訳部署で内定をいただいたんです。

でも、入社1カ月前、交通事故で頭を縫う大けがをしてしまって‥.。

幸い、後遺症もなく無事に退院できたのですが、体調を考慮して内定は見送られることになってしまいました。それでどうしようか、となって、じゃあ、もうフリーの翻訳家になっちゃえばいいかと。

 

―それは思いがけないことで…。大変でしたね。

はい。ただ、就職活動をしていたときから、フリーランスになる道も頭になかったわけではなくて、クラウドソーシングのサイトに登録をして、少しずつ仕事をやっていたんです。

子育てと両立する意味でも、自宅でできる仕事の方がいいかなという思いもあって。

 

―ちなみに初めてクラウドソーシングで受けた仕事って覚えていますか?

外国人旅行者向けに、日本文化を紹介する記事の英訳でした。

 

―ニーズのありそうな仕事ですね。フリーになってからのお仕事は最初からスムーズにいきました?

いえ、最初のころはやはり手探りでした。それまではビジネス英語で仕事をしてきたので、翻訳の世界は初めてでした。

毎日、翻訳の勉強しながらステップアップしていきました。

その都度、いただいたお仕事は全力で取り組んできたつもりですが、最初のころはクオリティーが低かったでしょうね。

 

―翻訳のどういうところが難しかったですか?

当然、ただ訳せばいい、というものではないので、翻訳家の力量が問われますよね。

どうしても直訳だと回りくどい表現や不自然なところが出てくるので、日本語と英語、両方の構造をよく理解したうえで、読みやすい文章を作らなければいけませんし。

意味は分かるけれど何か後味の悪い翻訳になってしまったり、日本人の好きな構文を使いまわしてしまったり、いろいろ難しい点はありました。

 

いろいろな仕事を経験してスキルアップ

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―お仕事をしながらスキルアップをしていった感じなんですね。

はい、飛び込み営業みたいに、とにかくいろいろな案件に応募しました。ジャンル、専門分野がさまざまだったので、その都度、専門書で勉強もして。

 

―翻訳するうえでは、日本語のスキルも問われますよね。

そうですね。私も最初のころは日本語の文章作成の本や、日本翻訳連盟の『日本語標準スタイルガイド』 で送り仮名や句読点の打ち方など、基本的なことを学び直しました。

 

―これまでの実績を拝見すると、本当にさまざまな仕事を受けていますよね。YouTubeコメントの翻訳って何ですか?

これは、伝統工芸の職人さんがYouTubeに動画をアップしたら、たくさんコメントが英語で寄せられたんだけど、内容が分からないので翻訳してほしいというものでした。

 

―そういう発注もあるんですね、面白い!

私も仕事をやり始めてから知ったんですが、クラウドソーシングでは企業だけじゃなくて、個人の方からの依頼もたくさんあって、いろいろな使い方があるんだなと思いました。

 

―英語教育動画の翻訳、というのもあるんですね。

これは、動画の中でしゃべっている英語を日本語に訳す、という仕事で。

英語を勉強している日本人向けの教育動画で、何をしゃべっているのか分かるように日本語訳を付けるというものでした。

 

―ほかにも、インターナショナルスクールの学校概要の和訳、防犯カメラ取扱説明書の和訳など、本当にいろいろですね。

怖いもの知らずで、何も知らないから逆にどんな仕事でも受けられたのかもしれません(笑) 

コネも経歴も光るものがなかったので、とにかく仕事できるなら、と。

 

7割ぐらいの仕事量で予定をコントロール

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―今日は一緒に来てくれたのは、2人目のお子さんなんですね。

はい。上の子は3歳になって、幼稚園に行っています。

 

―子育てをしながらのお仕事はどのような感じですか?

平日は、長女を幼稚園に送り届けたあと、日中は次女がお昼寝する3時間ぐらいを使って仕事をしています。

あとは夕方、長女を迎えに行き、戻ったら家でドタバタと夕食、お風呂、寝かしつけ。日中に終わらなかった分の仕事は、夜、子どもたちが寝てからやっています。

 

―お子さんたちが小さいうちは、仕事時間も限られますよね。

そうですね。やっぱり翻訳って、集中しないとうまくできない仕事なので、子どもたちが寝ている時間でないと難しいです。

だからと言って、夜にがっつり仕事を入れてしまうと、翌日の体力が持たなくて。

以前、締め切りまでに仕上げるのが厳しい仕事を、徹夜して何とかやり切ったことがあるんです。

でも、それで仕事は仕上げられても、翌朝からはまたノンストップの育児が待っていて休む時間がありません。

いくら仕事をやりたい気持ちはあっても、育児との両立で体力がついていかない、という現状を思い知って、無理をするような仕事はいけないなと実感しました。

 

―子育て中は何があるか分からないですしね。

そうなんです。自分のことすら何があるか分からない毎日なのに、ましてや子どもも含めてとなると、本当に余裕をもって仕事を入れておかないと大変なことになります。

先日も子ども2人がインフルエンザにかかり、さらに長女の幼稚園が学級閉鎖になってしまいました。

一日中、子ども2人が家の中にいると全く作業ができなくて大変でした。

 

―育児との両立で仕事をするとき、意識していることはありますか?

やっぱり自分ができる力の7割ぐらいで仕事量は押さえておかないといけないですね。

あとは毎月、子どもの行事なども含めて予定を確認し、その月に受けられる仕事の見通しを立てて、常に先を考えながら行動するようにしています。

夫は普段の帰宅が遅く、海外出張も多いんです。そのことも考慮して自分の仕事量を調整しないと、家のことがまわらなくなっちゃうので。

 

―家で仕事をしているメリットはどのようなことですか。

時間の有効活用、という面は大きいですね。在宅の仕事だからこそ、仕事、育児、家事をうまく両立できていると思います。

通勤もないですし、仕事と育児の合間に、洗濯物を片づけたり、掃除をしたり家事もできますから。私自身、仕事・育児・家事を、どれも均等に納得してやりたいタイプなので、今のライフスタイルには満足しているんです。

あと仕事だけ、育児だけだと煮詰まってしまうかもしれませんが、育児の合間に仕事をしていると、その時間がそれぞれ、自分をリフレッシュできる場になります。

自分の集中が続くのは、だいたい90分、というのも分かってきたので、適度な時間で仕事をやめて、家事や育児に頭を切り替えた方が効率がいいんですね。

うまくそうやって3つをまわしていくと、最大限に1日を使っている感じがあります。

 

柔軟に、自分の働き方をかじ取りしていきたい

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―最近のお仕事はどのような感じですか。

自分の専門をどう定めていくかは、仕事をやっていくうちに見えてくるのではないかと思っていました。

そのような中で、妊娠出産期の女性向けに医療や健康についての文章を英訳する仕事をお引き受けさせていただいて、私たちの生活と密接に関係する医療分野に興味を持ったんです。

それで医療系の学生が読む書籍や医学論文の書き方の本を独学で勉強しつつ、医療翻訳の通信講座を受講しました。

応用コースを受講したので内容がハイレベルで、課題の提出など苦労したのですがみっちり鍛えていただきました。

今はまさに、医療翻訳家としてスタートを切ろうとしているところ。

もちろん、翻訳家としての基本は同じなので、医療系以外のビジネス文書翻訳などはこれからも取り組んでいきたいです。

 

―お忙しい毎日なのに、さらに通信講座を受けられたのはすごいですね。

受講し始めたら課題もあるし、締め切りと葛藤しながら頑張りました。

やっぱり自分がこの道に進もうと決めて取り組んだことなので、最後までやり切れたと思います。

 

―翻訳というお仕事の魅力や、やりがいって、どのようなところでしょうか。

私が翻訳した文章を待っている人がいる、というのがすべてですね。

私がその文章の原本を作成したわけではありませんが、言語と言う壁を越える“橋渡し”をしているような使命感があるんです。

本当に縁の下の力持ち的な存在ですが、私が翻訳した文章でビジネスがまわっていく、というのを考えるとすごくやりがいを感じます。

 

―最後にこれからの働き方について、展望などあればお聞かせください。

これまでも、その都度、その都度、自分と家族の在り方や様子を見て、自分の働き方をコントロールしてきました。

今は育児と家事を両立させながら、自分が納得する形で仕事もできているので、ベストなスタイルじゃないかと考えています。

でも数年後、子どもが小学生ぐらいになって、ご縁があったら、またどこかの会社働くこともあるかもしれません。

これからも、そのときどきで柔軟に考えながら、うまく自分の人生をかじ取りしていきたいと思っています。

 

取材・文:吉岡名保恵

しおり翻訳
語学系専門学校を卒業後、メーカー商社で貿易・営業事務、外資系製薬会社で社内ヘルプデスクを経験。子育てのために退社後、フリーの翻訳家に。さまざまなビジネス文書の翻訳を手掛け、現在は医療翻訳を中心に活躍中。