【税理士解説】開業届とは?その書き方や税務署への提出の仕方

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アベノミクスの恩恵を受けて会社は業績が良さそうだけれども、給料の大幅な増加は見込めない。給料が上がるのが期待できないのであれば、会社の許可を得た上で副業でもしてみようかな…。

そのように思われる方も多いのではないでしょうか。

昔は本業以外に副業を持つことが禁止されていた会社がほとんどでしたが、最近では、副業を認める会社も少しずつ増えてきました。 

そこで今回は会社員の方が副業を始めた場合に、知っておくべき「開業届の基本」と「副業の税金の取り扱い」についてお伝えします。 

そもそも開業届って何?いつまでにどこに出せばいいの?

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個人が副業を開始する場合、「どの事業をするか」「どのようなお金が必要となるか」などを考えることは言うまでもありませんが、意外と忘れがちなのが、税務署への開業届の提出です。

開業届とは、事業を開始した際に提出する書類で、正式名称は「個人事業の開廃業届書」と言います。

こちらについては、開業してから1か月以内に、お住まいの住所を管轄する税務署へ提出する必要があります。うっかり提出を忘れていて、それより遅くなったとしても、特に罰則があるわけではありませんのでご安心ください。

開業届は最寄りの税務署などで手に入れることができますが、持っていない方は、国税庁のサイトからも手に入れることができます。

開業届ってどう書けばいいの?

「税務署のサイトを見たけれどもどのように書けばわからない」という方は以下に記載例を載せていますので、こちらを参考に記入してみてください。

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1. 住所を管轄する税務署の名前を記入

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検索で「●●町管轄税務署」などで調べることができます。

 

2. 納税地を記入

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納税地は税金を納める場所です。

別途副業のために事務所などを借りている場合はその事務所の住所でも結構ですが、副業の場合は自宅の住所となることが多いと思います。

あわせてあなたの連絡先を記入します。(携帯電話の番号でも可能です。)

 

3. 氏名を記入

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4. 生年月日を記入

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5. 個人番号を記入

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個人番号はマイナンバーカード・またはマイナンバー通知カードに記載されている12桁の番号となります。

仮に個人番号がわからない場合には未記載の場合でも提出を行うことはできますが、可能であれば記載するようにしましょう。

※あなたの住民票を「個人番号あり」で取得すると、個人番号を調べることができます。

 

6. 職業を記入

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副業の場合は会社員、と記載します。

 

7. 屋号を記入

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8. 届出の区分の記入

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「開業」の部分を○でくくります。

 

9. 所得の種類を記入

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事業(農業)所得を○でくくります。

 

10. 開業・廃業等日を記入

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開業日は事業をスタートさせた日を記入します。事業のスタート日は特に決まりはありませんが、初めて仕入れを行った日や売り上げが立った日などが基準となります。

 

11. 開業・廃業に伴う届出書の提出の有無を記入

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別途青色申告承認申請書(後述)を提出する場合こちらの「有り」に〇をつけます。

 

12. 事業の概要を記入

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どのような事業を行うかを記載します。(例:通信販売業、執筆業等)

 

13. 給与等の支払いの状況を記入

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従業員を雇って給料を支払う場合にはこちらに従業員の人数を記載します。

 

 

開業届の提出については、税務署に対して「私は〇〇業の事業をしています」という宣言を行うためのものですので、これ単独ではあまり効果はありません。

現に開業していて未提出だったからといって罰則もありませんので、提出する・提出しない、は最終的には個人個人の判断となります。

開業届を出す場合のメリット

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とはいえ「作るのは何か面倒くさそうだし、そもそも税務署に副業をやっているのが知られるのが嫌だし、未提出の場合だったとしても罰則がないのだったら出さなくてもいいのでは?」といった声が出てきそうですね。

そこで、こちらでは開業届を出すことによってどのようなメリットがあるのかを説明します。

「青色申告承認申請書」をあわせて提出すると、様々な税務の特典を受けることができる。

開業届を提出すると、セットで「青色申告承認申請書」を提出することができます。

そうすると、確定申告を行う際に様々なメリットを受けることができます。

主なメリットとしては

  • 副業の儲けから10万円または65万円を差し引くことが出来る(青色申告特別控除)
  • 家族従業員に給与を支給できる(青色事業専従者給与)
  • 副業で赤字が出た場合に3年間繰り越すことができ、翌年以降の利益と相殺することができる(繰越控除)

なお、「青色申告書承認申請書」の提出については、事業を開始してから2ヶ月以内に提出する必要があります。こちらは開業届と異なり、提出期限が明確に定められているため、提出を忘れないようにしましょう。

事業所得に該当すれば、赤字を他の黒字とぶつけることができる(損益通算)

副業として行っている事業が「事業所得」として認められれば、仮に副業がうまくいなかくて赤字だった場合には、給与収入とぶつけることができます。

これにより、給与収入で既に支払っている税金が還付される可能性があります、

ただし、副業が「事業所得」として認められず、「雑所得」に該当する場合には、この合算は認められていません。

「事業所得」か「雑所得」かの判断はなかなか難しいですが、

  • その副業が相当期間継続しているか
  • その副業がないと生活に支障が出るほど収入があがっているか
  • その副業に日々継続してそれなりの労力や時間を割いているか

などの総合判断により判定されます。

屋号を持つことが出来る

開業届に屋号を記載することができますので、今後副業を行う際にはその屋号を用いることができます。あわせて、銀行口座も屋号付きのものを開設することができます。

屋号を持つことで、個人名で活動を行うよりも取引先に対して安心感を与えることができるのではないでしょうか

開業届を出す場合のデメリット

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開業届のメリットは上記の通りですが「開業届を出すことは良いことばかりか」というとそういうわけではありません。

メリットもあればデメリットもあります。開業届を提出することによるデメリットは以下のようなものがあります。

事業所得でない場合には、あまり恩恵を受けられない

メリットに記載したもののほとんどは「事業所得」に該当する場合の特典です。

副業の規模があまり大きくない場合で「雑所得」に該当する場合には、特典を受けることができないため、提出の恩恵が少なくなります。 

失業保険がもらえない

開業届は「今後事業をやります」という宣言を行うものになるため、仮にその方が現在失業中、または今後退職する場合に、失業保険をもらうことができません。

失業保険をもらうことを検討する場合には、事業の開始時期・開業届の提出時期には注意が必要となります。

確定申告を行わないと税務署からお尋ねが来る可能性がある

当然、開業届を提出したことで税務署はあなたが副業を行っていることを知っています。

開業届を提出したものの、副業がうまくいかず、確定申告が必要ないと思って確定申告をしなかったとすると、税務署から確定申告がされてないことに対してお尋ねや、確定申告をするように連絡が来る可能性があります。

会社員としての収入と副業の収入がある場合、納税はどうなる?

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会社員の方が、副業をして利益が出た場合には、確定申告をする必要があります。

厳密にいうと、副業で年間20万円以上儲けを出した場合には確定申告をしなければなりません。

その場合には、どのように税金が計算されて、いつまでに税金を納めなくてはならないのでしょうか。

まず、税金の計算方法ですが、本人が給料以外に儲けを出した場合にはその給料に合算してその人の年間の所得が計算され、税金を納める必要があります。

具体例を用いて計算してみましょう。(税金については目安の金額となります。)

給料収入  500万円(年間に勤務先から得た給料の合計。)
副業収入  50万円(年間で副業で得た収入。)
①収入合計 550万円(給料収入+副業収入の合計。)

 

給与所得  346万円(税金計算上の給与の儲け。)
副業所得  30万円(年間で副業で得た収入から経費を差し引いた儲け。)
②所得合計 376万円(給与の儲け+副業の儲けの合計)

 

③所得合計に対する所得税額     23万円
④既に給料から差し引かれた所得税額 20万円
⑤確定申告で支払う所得税額     23万円-20万円=3万円(副業に対する税金)

給料に対する所得税は毎月の給料から控除されており、また、年末調整で精算されています。したがって、副業に対する所得税のみを確定申告で納めることとなります。こちらの所得税については確定申告の申告期限(3月15日)までに納める必要があります。 

また、副業にかかる税金は所得税だけではありません。副業に対する儲けには住民税もかかってきます。

住民税については確定申告を行うことで住まいの市町村にて計算され、確定申告を行った年の5月に金額の通知が来ます。

副業分の住民税の納付については確定申告の際に本人が選択することによって、毎月の給料からあわせて差し引いてもらうか、別途副業分のみの住民税を年に4回個人で支払うかを決めることが出来ます。

まとめ

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開業届の作成・提出はハードルが高いように思われますが、意外と簡単に作成することができ、提出することによって受けられる特典もあります。

開業を考えている方・既に開業をしている方はメリットデメリットを比較した上で、開業届の提出を検討してはいかがでしょうか。

【執筆者】
七島 悠介(ななしま ゆうすけ)


2010年国内大手税理士法人に入社。東京本部にて、上場会社の税務申告及び相続税申告を担当。同年税理士試験に合格。その後、福岡事務所において相続税申告、富裕層向けコンサルティング、事業承継コンサルティング、組織再編コンサルティングなどの資産税業務を主に担当。また、資産税業務のみならず、M&Aの企業価値評価、持分無し医療法人への移行サポート等、幅広い業務を担当。その傍ら、富裕層を対象とした相続対策セミナー講師を務める。

 

現在、税理士法人アイユーコンサルティングの福岡事務所長として、通常の税務顧問業務に加え、富裕層向けコンサルティング、事業承継コンサルティング、医療法人成りサポート等を担当し、相続・承継のスペシャリストとして活躍中。


▶所属している税理士法人:
税理士法人 アイユーコンサルティング