副業で作ったサイトが炎上。クビになる可能性はあるのか?

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ある会社員が、広告収入を目的にいわゆる「フェイクニュースサイト」を作っていた。

この会社員が勤める会社の就業規則には、副業するには会社の許可が必要との定めがあったが、収入自体は微々たるものであったため、副業として勤務する会社に届け出ることはしていなかった。

ある日、自分の作ったフェイクニュースサイトが炎上してしまい、いくつかのニュースサイトや5ちゃんねるにも取り上げられてしまった。

ネット上で自身の身元はばれていないが、会社内でも炎上は話題になっている。勤める会社からクビなどの処分を受ける可能性はあるのだろうか。

フェイクニュースサイトの作成は「副業」?

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フェイクニュースサイトの作成も「副業」となる可能性あり

以前の記事でも述べたとおり、何を「副業」というのかどうかは一概に明確ではなく、結局は、会社がどのような副業を問題視するのかという点が大切になります。

もっとも、一般論としては、趣味ではなく、広告収入を目的に継続・反復してフェイクニュースサイトを作成していたのであれば、会社がフェイクニュースサイトの作成を副業と見る可能性もあるかと思います。

 

フェイクニュースサイトの作成が問題となる場合は?

では、フェイクニュースサイトの作成が副業にあたると判断されたとして、会社はそのような副業を問題視するのでしょうか。

会社が無許可の副業に問題があるかどうかを判断する場合、大抵の場合、以下のような観点に着目するものと考えられます。

  1. 副業が本業に支障をきたすか(労働時間数、労働の時間帯など)
  2. 副業の内容が企業秩序を害するものか
  3. 副業先と本業が競業関係にあるか

本稿の「ある会社員」が、本業の就業時間中ではなく、帰宅後の隙間時間にフェイクニュースサイトを作成していたのであれば、①は問題ないでしょうし、通常の企業であればフェイクニュースサイトの作成と競業関係(③)にあることはないでしょう。

問題は、②の観点かと思います。

日本では、現在のところ、フェイクニュースが社会問題にまで発展することがあまりないですが、海外まで目を向けると、2016年のアメリカ大統領選挙に際して、主にトランプ陣営に関する情報について様々なフェイクニュースが飛び交い、社会問題となったことがあります。

ニュースをネットから収集する人が増えている現代において、フェイクニュースを含むネットニュースの影響力は軽視できないと思います。

そのような状況において、明らかなフェイクニュースの作成によって継続的な副収入を得ている社員が社内にいるということは、(社会的に身元が判明していないにせよ)会社内の風紀を乱し、ひいては企業秩序を害することにつながりかねないと会社が判断する可能性があると思います。

つまり、フェイクニュースサイトの作成という副業の内容が、企業秩序を害するものと捉えられ、無許可でそのような副業をしていたことをもって一定の処分を受ける可能性があると考えられます。

副業禁止規定以外の理由で処分の可能性アリ?

 

この記事では、フェイクニュースサイトの作成と副業禁止規定との関係から会社との間に生じる問題について記載しています。ただ、フェイクニュースサイトの作成によって、副業禁止規定とは関係なく、会社から処分を受ける可能性があります。

 

フェイクニュースサイトの内容は、様々ですが、中には、ニュースの対象とされている人の社会的な評判や名声を貶めるものもあります。そのような内容の場合、フェイクニュースの作成が、名誉毀損罪に問われる可能性があります)(※)。

 

※名誉を毀損された人がフェイクニュースを問題視し、作成者を告訴するかどうか等の不確定要素はありますが、理論上は、名誉毀損罪にあたります。

 

仮に、名誉毀損罪として刑事罰に問われ、有罪になった場合、刑事罰を受けたことから企業秩序を乱したとして、会社から懲戒処分を受ける可能性があります。

 

懲戒処分とは、業務に支障が生じる行為について懲戒を与えるものですので、原則的には、業務時間外の行動について刑事罰を受けたとしても直接の懲戒理由にはなりません。

 

しかし、犯罪の種類や報道の有無等によっては、刑事罰を受けたことによって、会社の名誉や社会的な信頼を害する可能性があり、懲戒処分がなされる可能性があるのです。

クビになる可能性は?

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副業として行っていたフェイクニュースサイトの作成が炎上によって、会社にばれてしまった場合、そのような副業をしていたこと、また炎上騒ぎを起こしてしまったことによって、会社をクビにされる可能性はあるのでしょうか。

結論としては、いきなり、クビにされる可能性は低いでしょう。

理論的には、就業規則に副業禁止規定があり、それに反した以上、懲戒処分としてクビにされる可能性はあります。

もっとも、そもそも規則違反によって会社からなされる処分の種類は、単なる口頭での厳重注意からクビまで、規則違反の程度によって幅広くあります。

また、日本は、外国と比べて、会社が従業員を解雇することが難しい労働慣習があり、最終的に適法性を判断する裁判所もそのような労働慣習に従います。

したがって、炎上騒ぎによってフェイクニュースサイトの作成が会社にばれてしまったとしても直ちにクビにされる可能性は低いと思います。

もっとも、会社が、注意を重ねているにもかかわらず、フェイクニュースサイトの作成をやめず、度々炎上騒ぎを起こしている、PVを増やすためにわざと炎上騒ぎを起こしている…など、企業秩序を乱す度合いが高い場合には、会社が解雇を選択する可能性があり、裁判所においても解雇処分が適法なものとされる余地はあると思います。

会社の理解を得ながら適切な副業を

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副業禁止規定のある企業で働く以上、アフィリエイトやネットオークションなどちょっとした収入であっても、副収入を得るために反復・継続して行う場合には、副業にあたりうることをしっかりと意識するべきです。

また、例え副業による拘束時間が短く、体力的に本業に与える影響が少ないとしても、それと異なる観点である企業秩序の維持という点から処分がされる可能性があることも念頭に置く必要があります。

最終的に会社による処分が適法かどうかという以前に、勤務している会社とトラブルになることは損以外の何ものでもないです。

会社と良好な関係を築き、気持ちよく副業を両立するためにも、会社の理解を得ながら、適切な副業の仕方を考えるのがよいでしょう。

【執筆者】
楠瀬 健太(くすのせ けんた)


中央大学法学部を卒業後、一橋大学法科大学院を経て、弁護士に。神奈川県下最大規模の弁護士数を誇る横浜綜合法律事務所に所属。労働問題を始めとする民事全般 から刑事事件まで幅広く取り扱っております。難しく思える法律をできる限り分かりやすくお伝えいたします。


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横浜綜合法律事務所